「寒の入り」ともいわれ、世の中では「寒中見舞い」が贈り交わされます。言葉の上では、この後に来る「大寒」のほうが寒気の強さを表していますが、「小寒の氷、大寒に解く」という言い伝えもあり、むしろこの小寒の時期のほうが、より寒気が意識されるかもしれません。
春の七草のひとつとして知られる芹は、冷たい沢の水辺で育ちます。『日本書紀』に「せり」の名がみられるほど、古くから私たちになじみのある食材です。
『万葉集』に「あかねさす昼は田賜(たた)びてぬばたまの夜の暇(いとま)に摘める芹これ」という歌があります。これは芹を摘んで意中の女性に贈った男性の歌で、「昼間は仕事で忙しく、ようやく夜になってからわずかな暇をみつけて摘んできたのがこの芹ですよ」という心。昔も今も、季節の風物を人に贈り、ともに楽しむのは、変わらぬ日本人の美意識なのでしょうか。