■盆と正月
旧暦を意識し「やってみながら」行事について考える。
ささやかでも、そんなことを続けていると、1年の行事は、カレンダーの上の点として存在するのではなく、月のリズムに息を合わせ呼吸するように、緩やかに続いていくものだということがわかってきました。
なかでも「盆と正月」は、大きな深呼吸。
時は「盆と正月」という、2つの極を持った螺旋状にめぐっていたともいえるのではないでしょうか。多くの行事が新暦に置き換わった今でも、お盆だけはやっぱり旧暦で、というところが多いのも、この行事の重要性を感じます。
下の写真は母の実家、秋田(湯沢)のお盆に登場する「とろんこ(とうろう)」と呼ばれる、モナカの皮でできた飾りです。ナスやぶどう、釣鐘などを、お盆の仏壇に飾るそう。
秋田から取り寄せてみた「とうろう」。なんと「製パン所」が作っている!
■死者を迎える日々
一連のお盆行事の流れを全国のものを取り混ぜて、ざっくりと追ってみましょう。
あなたの故郷、あなたの家ではどんなお盆をするのでしょうか?
これを記憶の扉を開けるきっかけにしてもらえればと思います。思い出したことがあれば、ぜひ教えてください。
※以下の日取りは旧暦。地方によって前後します。
7月1日
釜蓋朔日(かまぶたついたち)/釜の口開け
・この日、畑で土に耳を当てると地獄の釜の蓋が開く音が、精霊の叫び声が聞こえる!
・新盆の家で高灯篭を立てる。この頃精霊蜻蛉(赤トンボ)が飛ぶ。
7月7日
七夕
・墓地の掃除、道の草刈り、井戸浚い、水浴びなど。
眠り流し/ノミ流し
・睡魔を払うと言われるが、もともとは盆の物忌みか?
7月11〜13日
盆花迎え
・本来は野山に花を採りに行ったものだが、盆花売りから買ったり、盆の草市(お盆に必要なものを売る)で買ったりするように。
7月13日
迎え盆
・迎え火をたく。墓や川などから、先祖さまを背負って連れ帰る。仏様の足洗い。
先祖の食事作り。
・盆棚を作る。施餓鬼棚を作る。
7月13〜15日
盆踊り
・夜を徹して踊るうちに亡き人が一緒に踊る。
柱松、万燈など
7月14日
盆竈
・子ども達の共食。子ども達が盆に訪れる霊の代理として振る舞う?
7月15日
中元(盆礼)
・素麺、うどん、米、菓子、果物などを贈り合う。
精霊送り
・送り火をたく。精霊船を流す。盆綱引きをする。
7月16日
しまい盆
7月20日
二十日盆
7月24日
地蔵盆
8月1日
八朔
地方ごと、家ごとに身体を通して伝えられてきた作法、みんなちょっとずつ違うのでしょうね。この先、そういうものをちゃんとできるお年寄りが、どんどんあちらの世界の人になってしまうことを考えると、皆さんの身近な「当たり前」もちゃんと記録しておきたいものです。
東京の迎え火は「おがら」で焚くけれど、こんな「松」を売っているところもある。
山形ではこんな可愛い野菜をぶら下げるんですね。夏野菜オーナメントですね。
気仙沼の農協のスーパーで。この地方はマコモの舟に供物を乗せて流すのか?
■死んだら魂はどこへ行くのか?
毎年お盆にご先祖さまがあの世から帰ってきて、ご飯を食べたり水を飲んだりして、家族とともに数日暮らしては帰っていく。私たちはこんな「お盆」のありようを当たり前のものとして受け入れています。
しかし、改めて考えると、なかなか不思議なメメント・モリの風習です。歳神(としがみ)が毎年やってきて、山の神が春になると里に降りて田の神になり、秋には山へ帰るのだと考えたように、その根底には循環し繰り返す季節(時)を「異界との交流」の姿として捉える世界観があるのではないでしょうか。
人は死んだら、魂はどこへ行くのか?
世界中の人間がずっと考え続けてきたこの問題に、私たちのご先祖の想像力はどのような答えを見つけてきたのでしょう?
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