旧暦の卯月八日(4月8日)には、先端に花束をつけた長い竿を空高く掲げる「天道花」という行事が、日本各地で行われてきたそうです。
本格的な農業シーズンの始まりにあたって山から田畑に神様を迎える、疫病の流行りやすい梅雨や夏を前に(害)虫を除ける、仏教行事の「灌仏会(花祭り)」など、さまざまな民間習俗や宗教・思想がそのルーツに横たわり、複雑に絡み合って、目にも鮮やかな花束に象徴される行事として伝わったようです。
長い歴史がある行事とはいえ、人々が野山や田畑中心の生活から離れつつある現代では、天道花が空に揚げられている光景を目にすることはそうありません。でも、この行事を東京の町なかで「やってみる」経験を重ねてきた客員研究員・下中菜穂さんによれば、実際に季節の花を集め、天高く掲げてみんなで空を見上げたときの「高揚感」は、病みつきになるほどのものだとか。
新型コロナウイルス禍も、はや2年目に突入した2021年。「卯月八日」は、新暦ではすでに初夏の気配漂う5月19日でしたが、この天道花の行事を心に留めおいてくださった会員の方々もいらしたようです。みなさんそれぞれの天道花で、気分一新、コロナも吹き飛ばす心の特効薬を得られたのではないでしょうか。